入社前に知っておきたい基本ワード全まとめ
はじめに
入社初日、先輩から「セパのピッチ確認しといて」と言われたら、あなたはどうしますか?
言葉の意味がわからないまま「はい」と答えてしまう。そんな場面、建設現場では珍しくありません。型枠工事の世界には、教科書には載っていない現場固有の言葉が数多く存在します。
この記事では、型枠工事会社への就職を控えた方・検討中の方に向けて、入社前に知っておくと現場でグッと動きやすくなる基本用語を厳選してまとめました。
完璧に暗記する必要はありません。「あ、これ記事で見たやつだ」と気づける状態を作ることが、この記事のゴールです。
【第1章】そもそも型枠工事ってどんな仕事?

用語を覚える前に、まず仕事の全体像を掴んでおきましょう。
型枠工事とは、コンクリートを流し込むための「型(かた)」を作る工事のことです。建物の柱・壁・梁・スラブ(床)など、コンクリートでできる部分すべてに型枠が必要になります。
工事の流れはざっくり以下の通りです。
- 墨出し(どこに型枠を建てるか位置を決める)
- 加工(型枠パネルを現場寸法に合わせてカットする)
- 建て込み(型枠を組み立てる)
- 締め付け(型枠が広がらないよう固定する)
- コンクリート打設(コンクリートを流し込む)←他職種が担当
- 養生(コンクリートが固まるまで待つ)
- 脱型(型枠を解体・撤去する)
この流れを頭に入れておくと、用語が「工程のどこで使われる言葉か」と紐づきやすくなります。
【第2章】まず覚えたい「材料・部材」の用語
現場に入ると、最初に目にするのが材料や部材です。名前と実物が一致するだけで、先輩の指示がスムーズに理解できるようになります。
また、現場では正式名称よりも通称・スラングで呼ばれることがほとんど。「知っている言葉のはずなのに聞き取れない」を防ぐため、あわせて覚えておきましょう。
① 型枠パネル

通称:コンパネ・ベニヤ
型枠の基本となる板材のこと。正式名称は「コンクリート型枠用合板」ですが、現場では「コンパネ」と呼ばれることがほとんどです。「ベニヤ持ってきて」と言われることもあります。
一般的なサイズは900mm×1800mmで、厚さは12mmが標準。コンクリートを流し込む圧力(側圧)に耐えられるよう、表面に特殊な塗装が施されています。

② セパレーター
通称:セパ
型枠と型枠の間隔を一定に保つための金属製の棒です。壁を作る際、両側に建てた型枠が内側に倒れてこないよう突っ張る役割を持ちます。
現場ではほぼ100%「セパ」と略されます。冒頭の「セパのピッチ確認しといて」は、セパレーターを取り付ける間隔(ピッチ)を確認してほしいという意味。最初に覚えるべき用語のひとつです。
③ フォームタイ
通称:Pコン(ピーコン)と混同注意
セパレーターと組み合わせて使う締め付け用の金具です。型枠の外側からセパレーターのネジ部分に取り付け、型枠が外側に広がらないよう固定します。
なお、Pコン(プラスチックコーン)はセパの端に取り付ける部品で別物ですが、現場ではまとめて「セパ周り」と呼ばれることも。最初は混同しやすいので注意が必要です。
セパ・フォームタイ・コンパネは三点セットで覚えると理解しやすくなります。
④ 単管
通称:パイプ・鉄パイプ
直径48.6mmの鉄製パイプのことです。型枠を支えるための支柱や横つなぎ材として使われます。
現場では「パイプ持ってきて」「鉄パイプ2本」のようにシンプルに呼ばれることが多い。長さが様々なものがあり、現場の状況に合わせて組み合わせて使用します。
⑤ クランプ
通称:そのまま「クランプ」/直交・自在で呼び分け
単管同士、または単管と他の部材を接合・固定するための金具です。直交クランプ(90度固定)と自在クランプ(角度が変えられる)の2種類があります。
「直交くれ」「自在持ってきて」と種類で呼び分けられることが多い。最初は「どっちがどっち?」と混乱しやすいポイントです。

⑥ 桟木(さんぎ)
通称:さんぎ・バタ角(バタ)
型枠パネルの背面に取り付ける木製の角材のことです。コンパネ単体では強度が足りない部分を補強するために使われます。
「バタ角」や「バタ」と呼ばれることも多く、同じものを指しています。「バタ並べといて」と言われたら、桟木を並べて置く作業のことだと覚えておきましょう。
⑦ 剥離剤(はくりざい)
通称:ノックス・離型剤(りけいざい)
コンクリートを打設した後、型枠をきれいに外しやすくするためにコンパネの表面に塗る液体です。塗り忘れると、コンクリートと型枠がくっついて脱型が非常に困難になります。
現場では製品名から「ノックス塗っといて」と言われることも。「離型剤」という呼び方も混在しているため、どちらも覚えておくと安心です。
【第3章】作業で使う「道具・機材」の用語
材料の名前を覚えたら、次は道具です。「○○持ってきて」と言われた瞬間に動けるかどうか。それだけで先輩からの印象は大きく変わります。
① げんのう(玄能)
いわゆる両口ハンマーのことです。型枠工事では釘打ちや部材の微調整など、あらゆる場面で使う基本中の基本の道具。
「ハンマー」と言うより「げんのう」と呼ぶのが現場流。最初は言い慣れない言葉ですが、すぐに口から出てくるようになります。
② バール
釘を抜いたり、部材をこじ開けたりする鉄製の工具です。脱型(型枠の解体)作業では特に活躍します。
サイズは大小様々で、作業内容によって使い分けます。「バール持ってきて」と言われたら、解体・取り外しの場面だと理解しましょう。

③ 水平器(すいへいき)
型枠が水平・垂直に建っているかを確認する道具です。内部に気泡入りの管が入っており、気泡が中央にくれば水平・垂直が取れている状態。
型枠が傾いたままコンクリートを打設すると、建物全体の精度に影響します。地味ながら品質を左右する重要な道具です。
④ 墨壺(すみつぼ)
墨汁を染み込ませた糸を使って、材料に直線を引くための道具です。型枠を建てる位置を決める「墨出し」作業で使います。
チョークラインと呼ばれる粉末タイプの道具が使われることも増えていますが、現場では今も「墨壺」という呼び方が一般的です。
⑤ スケール(コンベックス)
いわゆる巻き尺のこと。型枠工事では寸法の確認が常に必要なため、職人が腰袋に必ず入れている道具のひとつです。
「スケールで寸法拾っといて」と言われたら、指定箇所の長さを計測してメモする作業のこと。

⑥ インパクトドライバー
ビス(ネジ)を素早く締めたり緩めたりする電動工具です。型枠の組み立て・解体の両方で使用します。
充電式が主流で、バッテリー管理も仕事のうち。「充電切れ」は現場での信頼を失う原因になるので要注意です。
⑦ チェーンブロック
重い部材を吊り上げて移動させるための手動式吊り上げ機器です。大型の型枠パネルや単管をクレーンなしで動かす際に活躍します。
操作を誤ると重大事故につながるため、使用ルールをしっかり確認することが必要です。
【第4章】工事の流れで出てくる「工程・作業」の用語

工程の流れに沿って用語を覚えると、仕事の全体像と言葉が同時に頭に入ります。第1章の流れと照らし合わせながら読んでみてください。
① 墨出し(すみだし)
コンクリートの床や壁に、型枠を建てる位置・基準線を描く作業のことです。この線がすべての基準になるため、精度が求められる重要工程。
「墨を出す」「墨を打つ」とも言います。墨壺やレーザー墨出し器を使って行います。
② 建て込み(たてこみ)
加工した型枠パネルを所定の位置に組み立てていく作業です。型枠工事のメインとなる工程で、精度・スピードの両方が求められます。
「建て込みに入る」という言い方をよくします。
③ 締め付け(しめつけ)
建て込んだ型枠がコンクリートの圧力で変形しないよう、セパやフォームタイで固定する作業です。締め付けが甘いと型枠が膨らみ、仕上がりに影響します。
④ 打設(だせつ)
コンクリートを型枠の中に流し込む作業のことです。型枠職人が直接行うことは少ないですが、自分たちの仕事の成果が試される瞬間でもあります。
「打つ」と略して使われることも多い言葉です。
⑤ 養生(ようじょう)
打設後、コンクリートが適切に固まるまでの期間、保護・管理することです。温度・湿度の管理や、型枠に不要な衝撃を与えないことが求められます。
「養生期間」は条件によって異なりますが、この期間は型枠を外せません。
⑥ 脱型(だっけい)
養生が完了したコンクリートから型枠を取り外す作業のことです。「バラし」とも呼ばれます。
「バラしに行く」という言い方は現場でよく使われます。コンクリートを傷つけないよう丁寧に外すことが求められる作業です。
⑦ 転用(てんよう)
脱型した型枠パネルを清掃・補修してから次の工程で再び使うことです。型枠は消耗品ですが、適切に管理することで複数回使用できます。
転用回数を管理することがコスト削減に直結するため、現場の丁寧さが会社の利益にも影響する場面のひとつです。
【第5章】安全管理で必ず出てくる用語
建設現場では、安全に関する言葉を知らないことが事故につながることがあります。難しく考える必要はありません。まず言葉の意味を知っておくことが第一歩です。

① KY活動(危険予知活動)
作業前に「この作業にはどんな危険があるか」をチームで話し合う活動のことです。KYは「危険(K)予知(Y)」の略。
毎朝の習慣として定着している現場がほとんどです。最初は聞いているだけでも、危険への意識が自然と身につきます。
② TBM(ツールボックスミーティング)
作業開始前に行う短時間の安全確認ミーティングのことです。その日の作業内容・役割分担・注意事項を現場メンバーで共有します。
KY活動と合わせて「TBM・KY」とセットで呼ばれることも多い言葉です。
③ 墜落制止用器具
いわゆる安全帯・ハーネスのことです。高所作業時に必ず着用が義務付けられています。
2019年の労働安全衛生法改正により、高さ6.75m以上の作業ではフルハーネス型の着用が原則義務化されています。(※詳細は厚生労働省の最新情報をご確認ください)
④ 作業手順書
その作業をどの順番で・どのように行うかを定めた書類です。現場によってフォーマットは異なりますが、安全に作業するための基本ルールが記載されています。
「手順書通りにやって」と言われたら、まずこの書類を確認する習慣をつけましょう。
⑤ 4S(よんエス)
整理・整頓・清掃・清潔の頭文字を取った、現場環境を維持するための基本活動です。型枠工事は資材・道具が多く、散らかりやすい環境になりがち。
4Sが徹底されている現場は事故が少なく、作業効率も高い傾向があります。新人のうちから意識しておきたい習慣です。
まとめ|用語は「現場で育てる」もの

今回紹介した用語を、一度に全部覚える必要はありません。
大切なのは、「あ、これ記事で見たやつだ」と気づける状態を作ること。その小さな気づきが自信につながり、先輩への質問のきっかけにもなります。
この記事で紹介した基本用語をおさらいすると、以下の通りです。
- 材料・部材:コンパネ、セパレーター、フォームタイ、単管、クランプ、桟木、剥離剤
- 道具・機材:げんのう、バール、水平器、墨壺、スケール、インパクトドライバー、チェーンブロック
- 工程・作業:墨出し、建て込み、締め付け、打設、養生、脱型、転用
- 安全管理:KY活動、TBM、墜落制止用器具、作業手順書、4S
型枠工事の仕事は、正確さと段取り力が光る、職人としての誇りを持てる仕事です。この記事をブックマークして、入社後も現場のたびに見返してみてください。
言葉が体に馴染んでくる頃には、あなたはもう立派な型枠職人への道を歩んでいるはずです。

