建物づくりの現場では、いくつもの専門的な作業が重なって一つの構造物が完成します。その中でも「型枠工事(かたわくこうじ)」は、完成後には見えなくなる工程でありながら、建物の基礎や骨格に大きく関わる重要な役割を担っています。
型枠工事とは、鉄筋コンクリート構造の建物をつくる際に、コンクリートを流し込むための「型」を組み立てる仕事です。まるでケーキの焼き型のように、コンクリートをしっかりと支え、正しい形に固まるように誘導するのがこの工事の役目です。
この工程が正確でなければ、建物そのものが傾いたり、想定された強度が出なかったりと、後戻りのできない問題につながります。だからこそ、型枠工事は「表に出ない品質」をつくる仕事として、熟練の技術と判断力が求められるのです。
今回は、そんな型枠工事の本質を、現場の視点からわかりやすく解説していきます。
コンクリートを“型”に流し込む?型枠工事の基本原理
型枠工事の基本は、「コンクリートを型の中で固めて、建物の形をつくる」ことにあります。建築では鉄筋とコンクリートを組み合わせて強固な構造をつくることが多く、鉄筋だけでは形が保てず、コンクリートだけでは支えきれないため、両者のバランスが重要です。
そのコンクリートを形づくる器こそが「型枠」です。現場では、コンクリートが固まるまでの間、圧力や振動にも耐えられるよう、木製のコンパネや鉄製のパネルを使って枠を構築します。その一つひとつの精度が、柱や壁の出来栄えに直結します。
加えて、コンクリートが固まった後に型枠を外す工程(脱型)まで見越して設計・組立てを行う必要があるため、目に見える形だけでなく、“後の工程”まで考慮したつくりが求められます。単なる組み立て作業とは一線を画し、建築全体を見通す力が問われるのです。
型枠工事に使われる道具と資材|木材・パネル・金具など
型枠工事では、多種多様な資材と専用の道具を使い分けながら作業を進めます。もっともよく使われるのが「コンパネ」と呼ばれる合板。これは木材を何層にも重ねて圧着したもので、軽くて加工しやすく、現場でも扱いやすい資材です。鉄筋と干渉しないように調整がしやすいのも特徴です。
また、公共施設や高層ビルなど精度が厳しく求められる現場では、鋼製パネルやフレーム付きパネルなども使用されます。これらは強度や寸法精度に優れており、仕上がりがより均一になります。ただし、重量があるため、組み立てや解体に熟練の技術が必要です。
資材の固定には、金物や締め具(セパレーター・フォームタイなど)を使用し、型枠がコンクリートの重みに耐えられるようにしっかりと締結していきます。現場では、ミリ単位の精度が当たり前とされるため、使う道具の品質や整備状態にも注意が払われています。
さらに、型枠の作業では「使いやすさ」も重要です。脱型後に資材を再利用することが多いため、解体しやすく、傷みにくい組み方を意識して設計されます。このように、ひとつの型をつくるために、道具・資材・技術が一体となって機能するのが型枠工事の特徴です。
型枠工事のプロセスを簡単に!どんな流れで進むの?
型枠工事の流れは、実はとてもシンプルです。ただし、一つひとつの工程には高い精度と慎重さが求められます。まず最初に行われるのが「墨出し」。これは施工図に基づいて、コンクリートの柱や壁の位置を床面に正確に描いていく作業で、建物のすべての起点となります。
次に、墨出しに沿って型枠を組み立てます。木製のパネルや金具を使って、柱・梁・壁などの形を現場で一つひとつ立ち上げていく作業です。この段階でほんの数ミリのズレが、建物全体の仕上がりに影響を与えることもあるため、常に測定機器で確認しながら丁寧に進められます。
組み立てが終わると、いよいよコンクリートの打設です。ポンプ車を使ってコンクリートを型枠の中に流し込み、バイブレーターという機械で振動を与えながら空気を抜き、隙間なく充填していきます。この作業中は気温や湿度にも注意を払いながら、打設のスピードと仕上がりのバランスを取る必要があります。
コンクリートが固まったら、型枠を外す「脱型」に進みます。このとき、表面がきれいに仕上がっているか、亀裂や欠けがないかを細かく確認。もし不具合があれば補修を行い、次工程へと引き継ぎます。
これらすべての工程が、型枠工事の一連の流れです。一見地味な作業の積み重ねですが、建物の“見えない力”を支える縁の下の仕事として、現場からの信頼がとても厚いのです。
どんな現場で活躍する?型枠工事の施工対象とスケール
型枠工事が活躍する現場は、私たちが日常的に目にしているあらゆるコンクリート建築物です。たとえば、駅や学校、病院といった公共施設。さらにはマンション、工場、高層ビル、橋梁など、多岐にわたる構造物の「土台」を支える工事に型枠職人の技術が欠かせません。
型枠のスケールも、工事の種類によって大きく変わります。たとえば高層ビルでは階ごとに繰り返し同じ型枠を使うこともあれば、特殊な形状の橋脚や壁では一度きりの形に合わせて一品物の型枠をつくることもあります。いずれも、図面だけでは伝わらない“現場の判断”が必要とされる仕事です。
また、型枠工事は「最初に現場へ入り、最後まで関わる」職種のひとつです。基礎の施工から構造の立ち上げ、仕上がり確認、後工程との連携まで、長期間にわたって現場の中心に関わるため、責任もやりがいも大きくなります。
近年では、プレキャストコンクリート(工場であらかじめ製造された構造材)を使用する現場も増えていますが、細部の調整や現場ごとの対応が求められる場面では、やはり現場施工の型枠工事が必要不可欠です。どれだけ工業化が進んでも、“最後の微調整”を担うのは職人の経験と感覚です。
中舘工業では、こうした現場で確かな技術を発揮したい方を募集しています。未経験でも基礎から指導し、一人前の職人へ育てていく体制が整っています。
→ https://www.nakadate-kogyo.jp/recruit
型枠工事の仕事に興味を持ったら|現場で求められるスキルと働き方
型枠工事は、単に体を動かすだけの仕事ではありません。施工図を読み取り、数ミリ単位の誤差を抑えながら作業を進める精密さ、次の工程を意識した段取り力、そして周囲の職人や監督との連携力。すべてが求められる総合的な仕事です。
一方で、最初からすべてを備えていなければならないわけではありません。道具の使い方、図面の見方、現場のルールなどは、経験を積みながら自然と身につきます。必要なのは、「形をつくる仕事が好き」「地道な作業にも意味を感じたい」と思える気持ちです。
これまで型枠工事を知らなかった方も、その役割や流れを知ることで、建物を見る視点が少し変わったのではないでしょうか。もし現場の最前線で力を試してみたい、手に職をつけて働きたいと思ったら、型枠工事という選択肢を思い出してみてください。
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